猪原先生のカトリックひとくち知識 Ⅰ

 

Ⅰ 紋章と標語
◇  国や団体や個人で、理想や方針や特徴などを表すために、紋章や標語を作るところが少なくありません。日本でも、国〈例えば旅券の表紙〉や、市など(横浜のものはご存知ですか?)。個人では「家紋」があります。カトリックでも例外ではありません。

◇ 以下、私たちに身近な横浜の司教、教皇、イエズス会、カナダ・ケベック州(順不同)のものを見ましょう。

横浜教区長 ラファエル梅村昌弘司教

inohara1-001

標語COMMUNIO COMMUNIONUM」(交わりのなかの交わり)。ヘブライ語でアッバ(父)の文字が入るミトラ(司教帽)で表された御父のいつくしみに見守られ、キリストの十字架をマストとする船で表された教会は、鳩で表された聖霊の息吹を受け、世の海原を旅する神の民として三位の神との一致を目指して巡礼の旅を続けます。

縦木よりも長めに描かれた横木のマストは、十字架で大きく手を広げ、すべての人を御父へと導かれたキリストの姿を表します。

教会は麦とぶどうで表された聖体に養われ、交わりと一致のしるしと道具としてキリストの救いの使命を果たします。紋章右下は横浜教区4県と富士山。下部の麦とぶどうはパンとぶどう酒(ご聖体)。(「カトペディア2004」から)

ご存知の通り、帰天された前の横浜教区長浜尾文郎枢機卿の標語は、「adveniat regnum tuum: 御国が来ますように」です。

教皇ベネディクト16世

inohara1-003 紋章は、杯(カリス)で、その上部に、宗教(とくにベネディクト会の霊性)を表す二つの肩マント(アミクトゥス)があります。バーバリア地方の伝統で、左にはムーア人の頭があります。これは、8世紀に作られたフライシング教区(後にミュンヘンを含む大司教区)の昔の紋章です。左には熊ですが、最初の司教がローマに馬で向かったとき、熊に襲われました。司教はこの熊をなだめて、荷物をローマまで運ばせたのです。熊は司教を表し、荷物は司教としての責任の重さです。

しかし、一番大事なのは、真ん中の赤地の中の貝です。第一の意味は、聖アウグスチヌスが三位一体のことを考えていたとき、浜辺にいた子供が、無駄にも、貝で水をすくっていたという有名な 話からです。神の神秘は偉大で、人智だけでは分らないという教えです。

第二は、これが巡礼者を表すということです。二俣川教会からスペインのサンティアゴ・デ・コンポステラへ巡礼された方々がいらっしゃいますが、道標の貝はよくご存知と思います。金と銀の鍵は、教皇の紋章にあるもので、マタイ福音書16-19にある「天国の鍵をわたそう。あなたが地上でしばることは天においてもしばられることになり、あなたが地上で解くことは天においても解かれることになる」と、イエスがペトロにおっしゃったことからです。

Tiara(ティアラ)という教皇の三重冠、時代と共に一つから二つ、三つと増えてきました。 これには、いろんな説があります。ローマ教皇庁(バチカン)の広報に書かれたアンドレア・コルデロランツァディ・モンテツェモロ枢機卿(教皇庁駐イタリア大使)によると、教皇の三つの権能である聖職、司法権、行政権を表すそうです。 また、上は「世界の牧者」、中が「世界の教会の管轄権」、下が「地上での権力」を表すという説もあります。また、「王や王子の父」、「世界の統治者」、「救い主イエス・キリストの代理者」という説もあります。 これは、今まで、教皇の戴冠式で、「教皇三重冠を受けなさい、あなたは、王や王子の父で、世界の統治者で、とこしえに栄光ある救い主イエス・キリストの代理者です」と言われるからです。

標語Cooperatores Veritatis (真理の協力者)は、近年の習慣で、紋章には記されてはいません。

教皇ヨハネ・パウロ二世

紋章は、崇拝する聖母マリアを表すMの文字があります。 標語は有名な Totus Tutus(全くあなたのもの)、 つまり、お告げinohara1-005以来、神である主に対して「完全な献身」をされたマリアに従いたい、「マリアを通じてイエスへ」ということです。

(以上、バチカンの広報から)

(ただし、正式の儀式のときは、三重冠は使いません。   ミトラ(司教冠)という折りたたみのできる帽子です。司教冠については、教友社刊「香部屋係りのハンドブック」をご覧下さい。)

◇ イエズス会

聖フランシスコ・ザべリオの名前は、日本で広く知らinohara1-007れています。神奈川県には栄光学園もあり、二俣川教会にも、この会の神父さんがミサや黙想指導などのために、よく来訪されます。日本で神学を教えておられたAdolfo Nicolás Pachón師(アドルフォ・ニコラス神父)が世界で二番目に大きいといわれるこの修道会の総長に一昨年選任されました。

会の標語は  Ad Maiorem Dei  Groriam (「神のより大いなる栄光のために」)

カナダ・ケベック州

フランス語を日常の言葉とする人が圧倒的に多いinohara1-009ケベック州(フランス語が公用語)は、二俣川教会の主任司祭ジャック・グルニエ神父さんのご出身の地です。

紋章標語は、1883年にケベックの州議会議事堂に彫りこまれました。 1978年から、Je me souviens(私は忘れない)は公式の自動車の免許プレートに書かれ、前にあったLa belle province(美しい州)にとって代わりました。この「美しい州」は、今では、州の別名として、観光用に使われています。いずれも、ケベックを愛し、誇りにしているからです。

紋章は、ケベックの政治の歴史を反映して、金色の百合はフランスの統治、ライオンはイギリスの統治、かえでの葉はカナダの統治を表します。

(以上、ケベック大司教区、ケベック州観光局などの資料から)